六甲でドローン定期便、22年事業化へ実証 先進企業誘致 神戸市が六甲山上と市街地を結ぶドローン(小型無人機)の定期便の運航実現に動き出す。

六甲山上の観光施設などの配送利用も想定している

神戸市が六甲山上と市街地を結ぶドローン(小型無人機)の定期便の運航実現に動き出す。18日にもスタートアップや運送会社など7社と協力し、食料品や医薬品など混載荷物の輸送実験を実施する。2022年の事業化を目指す。市は六甲山上エリアにIT(情報技術)企業やクリエーター事務所などを集積させる計画で、利便性や災害対応力を高めることで呼び込みにつなげる。

実験は六甲山中腹の展望台から山上にある観光スポットまでの直線約1キロメートルの区間で、片道5分で往復する。上空の電波状況や安定的に運航できるかなどを検証する。

スタートアップのトルビズオン(福岡市)が飛行ルートの設計や、土地を所有する財産区との調整を担当。同社はドローン運航者と上空の利用権を持つ土地所有者とを仲介するサービス「ソラシェア」を手掛ける。

神戸市や兵庫県、国土交通省の六甲砂防事務所などが発着地の提供などで協力。物流大手のセイノーホールディングス(HD)がドローンによる冷蔵商品の温度管理など物流を担当する。

ドローンは最大10キログラム積載できる機体を使う。冷蔵食品や市販薬、神戸市の広報チラシなどを混載して運ぶ。トルビズオンによると、複数の荷主の荷物を混載するドローン実験は全国初という。

山上エリアには現在約200人の住人がおり観光施設も多い。ただ食品や日用品を扱う商店は少なく、細かな買い物のために市街地まで出る負担は大きい。配送費は購入者や販売者が負担するが価格設定は今後詰める。ただ便をシェアすることで価格を抑えることができる見込みだ。トルビズオンの清水淳史取締役最高執行責任者(COO)は「単一の荷物だけでは収益化が難しく、混載することで事業化に近づけられる」と話す。

有人地帯で操縦者の目視外で飛行可能な「レベル4」を認める法改正が予定される22年の事業開始を目指す。初回実験後も混載荷物の種類を変えたり、飛行ルートを延ばしたりして実験を重ねる。事業化にあたっては現時点で、六甲山麓にある神戸市所有の鶴甲会館(灘区)などから山上への配送を検討。需要次第だが、最大で1日15便の往復を見込んでいる。

神戸市は六甲山上エリアの約430ヘクタールにIT企業やその働き手を誘致し、人工知能(AI)や5Gなどを生かす「六甲山上スマートシティ構想」を5月に公表した。先進技術を取り入れた職住近接の自然豊かなエリアとしてアピールを強める。今回のドローン実験でその口火を切る。

山上エリアは物流面や災害対応の面では弱点があった。例えば市街地を結ぶ市道「神戸六甲線」は24時間降雨量が120ミリ以上といった通行止め基準がある。過去に土砂崩れの発生で山上が孤立状態になったこともある。ドローン定期配送が実現すれば、日々の暮らしでの利便性向上のほか、緊急時の災害援助にも役立つ。安心して企業活動や生活ができるエリアとして魅力が高まるとみている。(沖永翔也)

日本経済新聞 より転載させて頂きました。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60210590Q0A610C2LKA000/?unlock=1

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